工学実験実習Ⅲでは最後の単元であるA/D変換器の作成についてこの文書では説明します.これまでデコーダでは自ら設計しはんだ付けを行い回路を作成しましたし,セレクタ回路と減算回路ではリバースエンジニアリングをつうじてそれぞれの回路の理解をしてきました.最後のA/D変換器にはさまざまな要素が含まれていますので,ここでは班ごとでブレッドボードに回路を作成することとします.
A/D変換器の回路構成
A/D変換器には下に示す7個の回路構成になっています.結構大きな回路になりますので,ブレッドボードの使用面積を抑えながら回路を作成しましょう.
- 無安定マルチバイブレータによる発振器(ユニバーサル基板に作成)
- 3ビットカウンタ(ユニバーサル基板に作成)
- ラダー回路(DA変換回路の一部)
- ボルテージフォロワー回路(DA変換回路の一部)
- 比較回路(コンパレータ回路)
- ラッチ回路による遅延回路
- ラッチ回路
下の図はこれから作成するA/D変換器の概要を表しています.ここではごく簡単に回路全体の動作について説明します.まず発振回路で方形波を生成します.いわゆるクロックです.そのクロックの立ち上がり(ポジティブエッジ)の回数を数えてくれるのがカウンタ回路です.今回は0(0002)から7(1112)までの3ビットで数えます.3ビットの信号をDA変換します.DA変換とはディジタル信号をアナログ信号に変えるものです.アナログ同士では比較できますが,アナログとディジタルの比較はできません.そこで,DA変換回路により,アナログ信号に変換するのです.そして,そのアナログ信号と,可変抵抗によるアナログ信号を比較します.こうすればDA変換回路により得られるアナログ信号はもともとディジタル値でいくつなのか分かっていますので,可変抵抗からのアナログ信号と比較してこちらの方が大きくなったときのディジタル値を捕まえて(ラッチして)減算回路へ送れば,これでAD変換ができるというわけです.下記の図にはこれとは別に遅延回路というものが含まれています.比較回路で可変抵抗のアナログ信号の方が大きくなった瞬間はカウンタのディジタル値が変化する瞬間でもあるため,不安定になってしまいます.そこで,比較結果から少しだけずらしたときのカウンタのディジタル値を得るため,遅延回路があります.