これまで足掛け3年かけて作成してきた,組込みソフトウェア用教材TKM-Hの概要についてここでは述べます.

DiagonallyForward

 

TKM-Hは,組込みソフトウェアを学ぶうえで必要な要素である,マイコン上で動作するプログラムを記述するための教材です.しかし,ただプログラムを書けるようになるだけではなく,ソフトウェアのライフサイクル(要求,分析,設計,実装)をひととおり学習できることを意図して開発されました.ライフサイクルを学ぶ上では,複数の技術者がひとつのプロジェクトに携わることが重要です.そのため,ある程度の規模のソフトウェアを構築できるように,多くの電子デバイスを搭載してあります.下に電子デバイスのリストを示します.

  • 解像度が640×480のカメラ
  • SRAM
  • SDRAM
  • ドットマトリクスディスプレイ
  • 3軸デジタルコンパス
  • I2C接続のEEPROM
  • キャラクタLCD
  • 赤外線式距離センサ
  • 圧電スピーカ
  • XBeeとBluetooth
  • SDカード
  • DCモータとドライバ
  • 反射式フォトインタラプタ
  • 透過式フォトインタラプタ
  • アナログジョイスティック
  • タクトスイッチ

TKM-Hにより行える教育を模式図で示します.大きく分けて4つあります.

スライド2

まずは組込みです.前述のとおり多くの電子デバイスを搭載していますので,かなり歯ごたえのある課題を提示することができます.マイコン以外にもFPGA(Xilinx社製 Spartan6)を搭載していますので,HDL言語の学習用教材としても用いることができます.さらにリアルタイムOS(RTOS)を搭載できるマイコン(ルネサス社製 RX62N)を搭載しています.

ソフトウェア開発手法としても使用することができます.大規模プログラムを組むとき,プロジェクトによるプログラム開発をしなければならず,そのとき,オブジェクト指向言語の方が行いやすいです.オブジェクト指向言語で組む場合,UMLによるソフトウェアの設計は大変親和性が高く,加えて広く普及しています.オブジェクト指向の考え方とUMLによる設計開発を行う教材として,TKM-Hを用いることができます.

通信機能も多彩です.調歩同期通信だけでなく,I2C,SPI,CAN,Ethernetなどの通信を行えるよう設計されています.また,無線技術として近年よく用いられているBluetoothとZigBeeも使えるようになっており,TKM-Hを遠隔操作することができるようになっています.このような通信方法を学習する教材としても用いることができます.

Androidやパソコンなどの外部機器と無線通信で接続し,TKM-Hを遠隔する応用例が考えられます.例えばカメラで撮影した映像を外部機器に送り,その映像にもとづきTKM-Hを操作するアプリケーションが考えられます.

この教材を使って,授業「マイコン応用」が行われています.

成果物