最近,いろいろな事情から放射線量を計測することが増えてきています.その結果,家庭向けに開発された安価な測定機器が登場したため普及しつつあります.その中の一つであるエアカウンターはかなり安価でしかも簡単に放射線量を測定できます.

 

 

このエアカウンターを使えば,手元の放射線量を測定できますが,複数個所の観測をする場合にはその場所へ実際に赴いて計測せざるを得ません.そこで,エアカウンターを改造して観測結果を無線で送信し,加えて複数観測点の情報を自動的に集約するシステムの開発に取り組むこととしました.

下に概念図を示します.今回,観測結果を送信するためにZigBeeを使用することとしました.その理由として,ZigBeeが簡単なアンテナでも300[m]ほど離れていても送受信ができること,電力消費が比較的少ないことなどが挙げられます.さらに,遠く離れた間を通信できるようにするため,アンテナを研究開発していくことにしました.

そもそも,今回のシステム開発を主導してくださっているのは,アンテナを研究開発している同じ学校の柄澤先生であり,より遠くまで情報を送れるアンテナとデータを送信できる小型のモジュールを開発するということが最終的な目標です.つまり,遠隔地放射線量測定システムはその一実装例に過ぎません. 

まず手始めに,エアカウンタとZigBeeを接続するところから始めていきました.実は,エアカウンターには隠された端子が用意されており,これを経由して測定結果を別の機材,たとえばマイコンで利用することができます.下の左側の写真は,エアカウンターの電池ボックスを空けた様子を撮影したものです.写真中央付近にある電池の形を模した図が書かれたシールの下には,エアカウンターと別の機器を接続するための端子があります.そこで,シール下側のプラスチックを切り取り,ピンヘッダを取り付けのが下の右側の写真です.2×5のピンヘッダを取り付けてあります.

 

次に,ZigBeeとそれを制御するマイコンを取り付けた観測ノード用基板を下に示します.中央にあるZigBeeはDigi社製のXBeeで,U.FLコネクタでアンテナとつなげています.下の写真のアンテナは市販品であり,今後はより遠くまで情報をやり取りできるアンテナの研究開発をしていきます.

下の写真は観測ノード用基板の裏側を示しています.ご覧のとおり,2×5のピンソケットがあり,これによりエアカウンターと接続されます.

 

パソコン側にはUSB接続でZigBee通信ができる回路を使用します.こちらは市販品です.ただし,下の写真にはありませんが,最終的にはこのZigBeeにも自作アンテナを取り付ける予定です.

 

最後に,今後のTODOを下に示します.

  • 観測ノード用基板に取り付けられているマイコン(PIC)で動作する,次に示すプログラムを作成します.
    • エアカウンターの電源を付けたり,消したりします.
    • 放射線量を受信し,ZigBeeで情報集約端末に送信します.
    • 情報集約端末から送られてくる命令,例えば精度に関する設定変更命令をエアカウンターに対して行います.
  • 情報集約端末(パソコン)で受信した放射線量を表示するプログラムを作成します.
  • より遠くまで情報を伝えられるアンテナの開発を行います.