この文書では,基板表面のはんだを塗布する箇所のみに限定するためのステンシル(ソルダーマスクともいう)の作成について述べています.カッティングマシンによりステンシルを作成するにはどのようにすればよいか試行錯誤しました.
ステンシル(ソルダーマスク)をまともに作ろうとすると,メタルマスクを作成するのがベストですが,そのようなマシンが私のところにあるわけがありませんし,メタルマスクを外注するとなると大変コストがかかります.そこで,カッティングマシンを使って紙やそれに類するものでステンシルを作ってみたいと思います.既にこれまで同様の試みを行ってきた人たちがおり,彼ら先人の知恵を拝借しつつ,先人がたどった失敗の歴史も少し触れながらどのようにするのが良いのか体験していきます.
まずは環境について説明します.ホームページでいろいろとみてきた結果,グラフテック社製 silhouette CAMEO2がポピュラで価格もそれほど高くないことを知りました.そもそもカッティングマシンとは,シール,POPやプリントTシャツなどを作成するときに用いる機械であり,ヘッドとシート移動部が動くことでシートに自由な形の穴をあけてくれるものです.eagleで作成したソルダーマスクをCAMEO2でも扱えるdxfファイルに変換し,この機械に渡すとステンシルができ上がるということです.
次にステンシルにする材質です.これもホームページで調べていくと,どの素材も一長一短という感じです.その中で今回はポリプロピレン合成紙とOHPシートを使ってみて,どちらが良いか検証します.ポリプロピレン合成紙はスイッチサイエンスなどで購入可能です.
では実際にCAMEO2でステンシルを作ります.eagleのデータからdxfファイルを作成する方法はこちらに書かれています.ただし,ここで紹介しているカッティングマシンはCAMEO2ではなく,Craft ROBOを使っています.参照してほしいのはあくまでeagleからdxfファイルを生成する方法が書かれている箇所のみです.後ほど,このdxfファイルをCAMEO2に付属しているShilhouette Studioで開きます.
dxfファイルができましたら,ポリプロピレン合成紙もしくはOHPシートをCAMEO2にセットします.セットの方法には,台紙ありとなしがあります.台紙とはCAMEO2に付属している粘着物質が付いた12インチ×12インチのシートで,この上にカッティングしたい材料をくっつけてカッティングします.ただし,この台紙は非常に粘着性が高いため,ポリプロピレン合成紙を貼り付けると,カッティング後にはがすとき,丸まってしまうことがホームページに書かれています.その対策として,粘着度をある程度下げたほうが良いようです.本当に丸まるのか試すために最初はあえて粘着物質をとらずにそのまま貼り付けてみました.その結果が下の写真です.ものの見事に丸まってくれました.このようになってしまうので,はやり台紙の粘着物質はある程度なくしたほうが良いみたいです.ただし,完全に落としてしまうと台紙の意味がなくなってしまうので,「程度」が大切です.
次に,CAMEO2のラチェットブレード(シートを切る刃)の設定について考えます.ポリプロピレン合成紙は150μmの厚さでカッターで切りやすい材質となっています.そのため,ラチェットブレードを次のような設定としました.
- 刃を4(1~10までの数字であり,数字が大きいと刃が飛び出て深くシートを切ることとなる)
- ヘッドの速度は1[cm/s]
- 厚みを20
- ダブルカット(2回同じところをヘッドがたどる)
- トラッキングの強化
この条件で切った結果が下のとおりです.概ねきれいに切れているかと思います.なお,左上のみ,後述の養生テープによる切った個所の取り除きを行っていますのできれいに穴が開いているようになっています.
次に穴が開いた個所をテープで取り除きます.切ったばかりだとまだシートに少しつながってしまっているため,この作業が必要です.用いるテープは養生テープとしましたが,大事なのは粘着物質が少ないことです.セロハンテープなどでもできると思いますが,必ずある程度粘着物質を取ってください.それは養生テープでも同様です.養生テープの粘着物質をあまりとらずに使うと下のようにポリプロピレン合成紙がはがれてしまうことがあります.中央付近で突起となっている箇所があり,これがテープによりはがれてしまっている箇所です.こうならぬよう,養生テープなら掌に10回くらいくっつけて粘着性を下げ,それからポリプロピレン合成紙にくっつけてください.
以上のようにすればポリプロピレン合成紙でステンシルができます.ただし,合成紙はあまり頑丈な素材でなく,何度かステンシルとして使用していくうちに伸びたりして使えなくなることがあり得ます.そこで,OHPシートをステンシルにしてみることとしました.OHPシートは厚手で頑丈であり,合成紙と比較して伸びにくいのが特徴です.OHPシートの場合にはラチェットブレードを下のように設定しました.
- 刃を10
- ヘッドの速度は1[cm/s]
- 厚みを33
- ダブルカット(2回同じところをヘッドがたどる)
- トラッキングの強化
この結果,下のようになりました.
割ときれいにできたかと思いますがいくつかの問題点があります.
- 切ったところに残る場合が多く,ピンセットで取り除かなければならい.
- そもそも切れていない箇所もあるため,ピンセットで無理やり押して穴をあける場合がある.そのとき,隣の穴までつながってしまうことが多い.
このようなことから,CAMEO2でOHPシートを使うのはやや難がある様です.
まとめ
- 台紙の粘着物質はある「程度」なくしたほうが良い.
- 穴が開いた個所をテープで取り除くときには,テープの粘着物質をある程度取る方が良い.
- OHPシートは穴が開かない場合が多いのでお勧めできない.
- 台紙からシートをはがすときには,台紙の方をまげて,ステンシルとなる方をなるべく曲げない.