7セグメントLEDのデコーダができましたら,次にセレクタ回路について考えてみましょう.今回はデコーダ回路の作成のように位置から回路を設計していくのではなく,すでにセレクタ回路として動作することが分かっている基板がどのようにANDやORなどのゲートがあるのか,回路図を作成していきます.このように,すでにある基板から回路図作ることをリバースエンジニアリングといいます.この作業により,回路の中身を皆さんはしっかりと理解できるようになると思いますので頑張ってください.
セレクタ回路の役割
セレクタ回路とは複数の信号の中から1つの信号を選び出してくれる回路です.今回は減算回路から得られる3種類の信号の中から1種類をスイッチによって選び出します.1種類の信号は3ビットとなっているため,9ビットの信号から3ビットを選ぶようになります.便宜上,入力信号をA2,A1,A0(以上をまとめてA),B2,B1,B0(以上をまとめてB),C2,C1,C0(以上をまとめてC)と呼ぶことにします.下の図は今回考えるセレクタ回路の概要です.減算回路から出力されるA,B,Cの信号をセレクタ回路では入力とし,OUT2~OUT0とENをセレクタ回路の出力とし,最後にデコーダ回路ではIN2~0とENを入力としています.セレクタ回路の入力と出力について注目すると,9ビットの信号から4ビットの信号が出力されていることが分かるかと思います.
基板の外観
基板の外観を下図に示します.J1とJ2が基板を接続するためのコネクタ,IC1~IC6が74LS04などの汎用ロジックIC,C1~C6がバイパスコンデンサ,SW1とSW0が信号を切り替えるためのトグルスイッチとなっています.
コネクタのアサイン
セレクタ回路の基板にはJ1とJ2のコネクタがあり,J1は後ほど考える減算回路と接続され,J2は先ほど作成したデコーダ回路と接続されます.ここではJ1とJ2のコネクタについて説明します.
デコーダ回路にはIN2,IN1,IN0とENの信号がありました.セレクタ回路において,出力信号はOUT2,OUT1,OUT0とENがあり,IN2とOUT2,IN1とOUT1,IN0とOUT0,ENとENが接続されます.下の表はデコーダのJ1とセレクタのJ2の対応を示したものです.
ピン番号 | デコーダのJ1(入力端子) | セレクタのJ2(出力端子) |
1 | VCC | VCC |
2 | VCC | VCC |
3 | VCC | VCC |
4 | VCC | VCC |
5 | VCC | VCC |
6 | IN2 | OUT2 |
7 | GND | GND |
8 | IN1 | OUT1 |
9 | GND | GND |
10 | IN0 | OUT0 |
11 | GND | GND |
12 | EN | EN |
13 | GND | GND |
14 | GND | GND |
セレクタ回路基板にあるJ2コネクタを下図に示します.
セレクタ回路において,入力信号は前述のとおり9ビットあり,A2,A1,A0(A),B2,B1,B0(B),C2,C1,C0(C)があります.これらがセレクタのJ1に割り付けられています.下の表はそのアサインを示しています.なお,空欄となっている端子に何が接続されているか(もしくは接続されていないか)をテスタで確認してください.
ピン番号 | セレクタのJ1(入力端子) |
1 | |
2 | B2 |
3 | A2 |
4 | B1 |
5 | A1 |
6 | B0 |
7 | A0 |
8 | C2 |
9 | |
10 | C1 |
11 | |
12 | C2 |
13 | |
14 |
セレクタ回路基板にあるJ1のピンアサインを下図で示します.
また,セレクタ回路のある基板には2個のトグルスイッチがあり,これにより得られるSW1とSW0の信号があります.SW1とSW0はJ1端子に割り付けられていませんので注意してください.
使用するIC
今回の基板にはIC1~IC6までの汎用ロジックICがあります.IC1~IC6がどのICなのかまとめて下の表に示します.
部品名 | ICの種類 |
IC1 | 74LS04(NOT) |
IC2 | 74LS08(AND) |
IC3 | 74LS08(AND) |
IC4 | 74LS08(AND) |
IC5 | 74LS32(OR) |
IC6 | 74LS32(OR) |
セレクタ回路の基本構造
繰り返しになりますが,今回のセレクタ回路では9ビットの信号から4ビットの信号を選択するようになっています.しかし,セレクタ回路の基本構造は,2ビットの信号から1ビットの信号を選択するものです.ヒントとして,ここではセレクタ回路の基本構造を下の図に示します.左側にあるスイッチが切り替わると出力であるOUTがAかBに切り替わることが確認できるかと思います.
スイッチの接続方法
セレクタ回路には信号を切り替えるスイッチSW1とSW0があります.ここではスイッチの接続方法について考えます.考え得るスイッチの接続方法は下図の2種類です.いずれも信号SW0からVCC(=5[V])かGND(=0[V])が出力されます.しかし,これらにはある違いがあります.
演習
上に示したスイッチの接続方法により,どのような違いがあるのか,それぞれの長所と短所を交えて説明してください.また,何か問題となることがあればそれも答えてください.
リバースエンジニアリング
ここでは今回の単元で行ってほしいことであるリバースエンジニアリングについて説明します.リバースエンジニアリングとはすでにある基板から回路図を作ること,と以前説明しました.従いまして,最も単純な方法はコネクタやICソケットの端子の接続状況をテスタでひたすら導通を調べることです.このような泥臭い方法を用いてもよいですが,ある程度,回路を想像したほうが効率的です.前に書きました,セレクタ回路の基本構造や,本回路がどのように動作するのかを理解したうえでリバースエンジニアリングしてもよいです.
注意点
スイッチSW1とSW0の状態により,接続先が変わる箇所があります.スイッチ周辺の回路がどのようになっているのか考えたうえで,テスタによる導通確認をすることをお勧めします.
報告事項
レポート形式で下記の3点について報告してください.
- 回路図
デコーダ回路と同様に,入力を左側,出力を右側になるよう心がけてください. - 真理値表(機能表)
A,B,Cの9ビットに加え,SW1とSW0の2ビット,計11ビットを入力,OUT2~0とENの計4ビットを出力とする真理値表を書くことになります.ただまともに書くと総合計15ビットの真理値表となってしまい現実的ではありません.そこで,機能表(Function Table)のようにある程度の信号をまとめて書くようにしてください.具体的には,入力をSW1とSW0のみとし,出力であるOUT2~0をOUTとしてまとめてしまい,OUTにA,B,Cのいずれとなるかを示すような図を書いたらどうでしょうか. - 課題
- 基板にある6個のバイパスコンデンサの役割や容量,基板への取り付け位置を調べてください.取り付け位置については下図で示す3種類のうちどれが適切か,その理由を添えて説明してください.
- スイッチの接続方法で示した,スイッチの接続方法について,それぞれの長所と短所を交えて説明してください.また,何か問題となることがあればそれも答えてください.
- 基板にある6個のバイパスコンデンサの役割や容量,基板への取り付け位置を調べてください.取り付け位置については下図で示す3種類のうちどれが適切か,その理由を添えて説明してください.