無安定マルチバイブレータによる発振器
無安定マルチバイブレータとは,ずっと一状態にとどまらないマルチバイブレータですので,つまりオンとオフをずっと繰り返している回路といえます.マルチバイブレータには反対に一度だけオンとオフをした後,オフに成りっぱなしとなる単安定マルチバイブレータもあります.こちらはワンショット・マルチバイブレータという時もあり,チャタリングを防ぐために用いられます.チャタリングは一定時間内にオンとオフを断続的に繰り返してしまう現象ですので,ワンショット・マルチバイブレータを用いれば最初の変化からある一定時間まではずっとその状態を保持し続け.その後元の状態に戻るため,チャタリングを起こしている間の変化をやり過ごすことができるからです.
下の回路図はトランジスタを用いた無安定マルチバイブレータです.配線がクロスしているので少しわかりづらいですが,シンメトリに電子部品が接続されています.
この回路により得られる方形波の周波数fは,抵抗R3,R4,静電容量C1,C2で決まります.もし,R3とR4が等しく,C1とC2が等しい場合,それぞれの値をRとCとおくとfとの関係は下に示す式のようになります.
{jmimetex}f=\frac{1}{T}=\frac{1}{ln(2)\cdot 2RC}\approx \frac{0.721}{RC}{/jmimetex}
発展問題
なぜ上記のようなことになるのか調べてください.
無安定マルチバイブレータを作成するには次に示す電子部品が必要となります.抵抗ごとに部品用皿に入っているはずですが,まれに違う部品が含まれていますので,特に抵抗についてはカラーバーを読んで抵抗値を調べてください.
部品の種類 | 部品記号 | スペック |
炭素被膜抵抗 | R1,R2 | 330[Ω],誤差5%,1/4[W] |
炭素被膜抵抗 | R3,R4 | 10[kΩ],誤差5%,1/4[W] |
積層セラミックコンデンサ | C1,C2 | 0.1[uF] |
NPN型トランジスタ | T1,T2 | 2SC1815 |
トランジスタの使い方
今回使用する2SC1815はNPN型のバイポーラトランジスタで,リード(いわゆる足)はベース[B],エミッタ[E],コレクタ[C]の3本です.回路図ではそれらが下に示すようにあらわします.なお,矢印の向きが外側を向いているのがNPN型,反対に内側に向いているのがPNP型です.
これらのピンアサインはデータシートによると下の図のようになっています.中段あたりにある図は,2SC1815を下から見た図です.見る向きで逆になってしまいますので注意してください.
※上記の図は2SC1815のデータシートの一部です.
2SC1815の写真でピンアサインを示しますと下のようになります.左側のリードからE,C,Bの順番になっています.多くのトランジスタではこの並びになっているため,慣れた人だとECBを「エクボ」と覚えるそうです.しかし,絶対にこのアサインであるとは限りませんので,やはり最終的にはデータシートを必ず見るようにしてください.
実験と報告
上記の回路図にもとづき回路を作成してください.そして,TP1の位置(CLK)をオシロスコープで観察しましょう.観察した波形は方形波になっているはずです.この方形波の周波数を調べてください.理論値との違いもチェックしてください.また,{jmimetex}\overline{CLK}{/jmimetex}もあわせて観測してください.TP1と{jmimetex}\overline{CLK}{/jmimetex}は逆位相の関係になっているはずです.
観測した図は,手書きもしくはgnuplotなどで描画してください.オシロスコープにあるキャプチャリング機能で撮影したものをレポートに用いないでください.gnuplotなどで描く場合,観測した波形をデータ化し,CVS形式で出力する機能をオシロスコープは備えていますので,その機能を使ってデータを取得してください.複数の波形を一つの図で示すとき,必ず縦方向に分けるようにしてください.この理由は,複数の信号を重ねて描画してしまうと,仮に信号ごとに線の種類が違っていても分かりづらくなるからです.なお,このように縦方向を電圧,横方向を時間とし,複数の信号を縦に並べてそれぞれの関係を表す図のことをタイミングチャートといいます.
無安定マルチバイブレータとカウンタ回路はユニバーサル基板に作成します.この場合,実体配線図を作成してからはんだ付けを行ったほうが確実に動作する回路を作成できます.ユニバーサル基板のための実体配線図を作るときに使う資料をこちらに置いておきます.